中央区の図書館問題 番外編 指定管理者制度の本を読む
指定管理者の問題を考えるのには、もちろん現実から学ぶこと、そしてネット情報も役に立ちますが、論文・論考や書籍を読むのも勉強になります。ここでは、ちょうど昨年に出版されたものが参考になりそうでしたので、紹介します。それは、…
宮脇 淳編著、井口寛司、若生幸也著 『指定管理者制度問題解決ハンドブック』 東洋経済新報社 2019年10月発行 です。
正直なところ、法律や行政をよく知らない者にとってはなかなか難解な本でありましたが、指定管理者制度の意義とあり方をいろんな点から考察して、実務に生かしていこうとする著者達の姿勢は伝わってきました。このようなチェックを通すことで、はじめて劣化しない制度になり得る可能性があるのでしょう。十分読みこなせていないことは認めつつも、以下は2つの観点から内容を紹介させていただき、参考にしていきたいと思います。引用は、分担執筆の著者名と本のページを書いています。
エビデンスと内部統制の重要性
「エビデンス(Evidence:根拠)による政策展開とは、政策選択の背景となる政策情報の見える化・可視化とその共有を意味する。(中略)特定の利害関係者間や政治的パワーゲームによる調整ではなく、当該選択肢を選んだ理由を明確に住民や納税者にも説明することを担保した議論が必要になる。」(宮脇淳、p.66-67)
「執行部の意志決定や事務処理過程を明らかにすることは、税負担主体である委託者(住民)から受託者(地方公共団体執行部)としての『善良な管理者の注意義務』(善管注意義務)を果たしているかが問われることになる。(中略)なお、当然ながら議決した案件は地方議会として十分な議論の上で議決したかという『議決責任』も問われることになる。」(若生幸也、p.198)
ここでは、議会としてのチェックももちろん必要で大事ですが、自治体からもきちんと政策情報を出していくなど、ますます内部統制が大切になる、ということなどが書かれてます。それは官民連携でも同様というか、むしろ難しくなるということです。
指定管理の問題のいくつか
「地方公共団体が指定管理者の従業員に対して、直接指揮命令を行うことは許されていない。(中略)いわゆる偽装委託との疑念を抱くことになる。」(井口寛司、p.167-8)
「指定管理期間において指定管理者が行った管理運営事務によって培われたノウハウや技術は、地方公共団体にとっても大きな財産になる一方で、指定管理者にとっても大きな財産になる。また、そのノウハウ等は、現実には、当該公の施設において管理運営事務を行った従業員によって維持されているものであることから、それらの従業員と施設との関係が解消されるのは社会的にも不経済である。」(井口寛司、p.175)
「指定管理者制度における審査手続においても、地方公共団体は、『公正性』『経済性』『均等な参加の機会の平等』を確保することを前提にしながら、その手続の方法や選定基準などを事前に公表し、選定審査手続の過程、審査結果についても可能な限り説明する透明性確保が求められている。(井口寛司、p.179)
「指定管理の候補者の不指定に対して行政不服審査方法に基づく不服申立てができるかが問題である。(中略)行政不服審査法2条に基づいて審査請求をすることができないと解される。(中略)この点、条例で定める指定プロセスに手続き瑕疵があり、(中略)次点者については、不服審査申立て権を有すると考えられる。(井口寛司、p.185-6)
これらは、労働法の問題、経営ノウハウの承継の問題、審査の公正性・透明性等の問題、行政不服審査のことなど、指定管理者制度を採用していくに当たっての問題・論点のいくつかを記述しているところなので、個々の論点を議論する上でもおさえておきたいものです。
このように、一部をとりあげても、指定管理者制度をめぐる問題はいろいろ注意点、論点があるかと思います。良書を参考にしながら、じっくり議論していくべきものでしょう。もちろん、住民等参加の上でです。そのようにこの本から学ぶことができました。